元利均等返済モデルの考察
元利均等返済モデルの考察

元本T円の当期首時点での借入に対して、借入期間nヶ月にわたって、毎期間a円の返済を行い、n回支払後の借入返済額がゼロとなる、このような借入返済モデルを元利均等返済モデルと呼ぼう。 このとき、期間利率をr、第i回返済後の借入残高を数列T(i)で表すことにしよう。

すると、この返済残高数列T(i)は次のように、記述される。

    
                  (0)式         T(0)= T
                                T(1)=(1+r)* T(0) − a 
                                  T(2)=(1+r)* T(1) − a
                                           ・      
                                                 ・      
                                      T(i)= (1+r) * T(i-1) − a
                                           ・      
                                      T(n)= (1+r)* T(n-1) − a = 0   
        

T(i)は、第i期の残高は第i-1期の元本と利息の合計額から毎期の均等返済額a円を引いたものである事を示している。
 さて、ここでT(0)にTを代入してT(1)を計算し、次にrとTで表したT(1)でT(2)を計算するという帰納的手法でT(i)を表そうとすると以下のようになる。

                  (1)式            T(i)=(1+r)^i * T − a*(1 + (1+r) +(1+ r)^2 +・・・+(1+r)^(i-1))
         

そして、n回返済後に完済すなわち残高がゼロであることに留意すれば 
                  (2)式     T(n)=(1+r)^n * T − a*(1 + (1+r) +(1+ r)^2 +・・・+(1+r)^(n-1)) = 0 
        
であることからaの係数部分を等比数列の和公式で示し、これをaについて解くことで毎月の均等返済額を得ることが出来る。すなわち、

                  (3)式     a = (1+r)^n * T * r / ((1 +r)^n−1)    
        
で、あり、これよりa は T、n、r により決定される事が解る。すなわち、毎月の返済額は当初借入額、返済期間、期間利息、によって決定される。

ところで、ここで(2)式に注目してみると
                  (4)式      (1+r)^n * T = a*(1 + (1+r) +(1+ r)^2 +・・・+(1+r)^(n-1)) 
       
が明らかに成立する。この式は第n期時点で評価したのキャッシュフローとして両辺を捉えれば、割引率(1+r)のもとで、第0期に借り入れたT円の現在価値が、第一期から第n期に行った均等返済額a円の現在価値の和に等しい事を意味している。

また、(4)式を(1+r)^nで割れば第0期時点で評価した借入額と第一期から第n期に行った均等返済額a円キャッシュフローの関係式 として、解釈できる。 すなわち、
              (5)式        T = a*(1 + (1+r) +(1+ r)^2 +・・・+(1+r)^(n-1))/(1+r)^n  
      
であり、ここでaの係数をみれば、これは資本コストr、期間nの場合の年金現価係数に当たる。 すると、結局(3)式で求めた返済額aは借入額を資本コストr、期間nの場合の年金現価係数で割ったものとなる。
 さらに、これより資本コストr、期間nの場合の当初借入額−均等返済額比率、つまりT/aは年金現価係数の値として一定になることがわかる。
 これらのことから,aはT、r、nの変化に対してT、rについては増加関数であり、nについては減少関数である事が言える。
 すなわち、その他の与件が所与であれば、Tが増加すれば、年金現価係数を一定に保つように比例的にaが増加し、rの増加は年金現価係数を減少させるから比例的ではないがaの増加を招く。また、nの増加は当然に年金係数を増加させるからaは減少する、ただし年金現価係数はnの増加にしたがい 1/r に収束していくので期間を延長した事による返済額の減少幅は逓減して行くこととなる。

 この点には若干の留意が必要である。ここで、改めて(3)式について、nの極限を考えた場合にnの増加により返済額aは当初借入額の期間利息T*rに近づいて行くことが理解できる。
 そして、この点は極めて当然ではあるが、仮に、毎期の返済額が想定されていたとしても、もし当初借入額の期間利息T*rを想定返済額が下回るなら、Tの借入は不能であり、借入額Tを引き下げなければ借入は出来ない。
 当初借入額の期間利息を想定した毎期の返済額が下回るのであれば、1回目の返済後の借入残高は当初借入額より増えてしまい、以後期間の経過と共に残高は増加して行くからである。(ただし、ここで残高とは当初の借入金額に毎期の未払の利息を新たな借入元本に追加する、複利計算を想定している。)
 また、想定返済額が当初借入額の期間利息T*rを上回るにしても、その幅がわずかであれば、返済期間は極めて長くなる。この点は現実的な借入・返済を行うのであれば、少なくとも当初借入額の期間利息T*rを十分に上回るだけの毎期の返済額を予定すべきである事を示唆している。

 さて、以上で毎期返済額aが当初借入額T、返済回数n、期間利率rによって決定されることを見てきたが、逆に返済回数nも当初借入額T、毎期返済額a、期間利率rによって決定される。期間利率、借入額と毎期の返済金額が予め決まっている場合の返済期間は、代数的には(3)式をnについて解けば求められる。
(ただし、T/a < 1/r)

                  (6)式            n=log((a/(a - T * r))/Log(1 + r)

      
ただし、算式上は所謂1円未満の端数処理の部分は処理は考慮されていないため、実際にシュミレーションを行うと若干の誤差が生じることがある。
 特に、当初返済額が1円程度の場合に返済回数が2000回を超えるような数値が算出されたときは200回程度の誤差があり得る。一見すると誤差が甚だしい感じがするが、現実の問題として考えれば返済期間が50年以上となる計算は借入に対して、毎期は利息のみを支払い、いずれ一括で返済する事を前提とする場合が多く、実際には誤差はあまり問題にはならないと考えられる。
 尚、(6)式は対数計算をしなければならないが、もし資本コストrについての月次ベースの年金現価係数表があればこれを使って返済回数を求めることもできる。
 先程、述べたように当初借入金額ー毎期返済額比率であるT/aは年金現価係数を示しているから、これを計算して、所与の資本コストの元で算出された年金現価係数を探し、相当する月数を読みとれば、それが返済回数となる。尚、数値が2つの年金現価係数に挟まれる場合には、そのいずれかを取り最終返済の際にのみ返済額を加減するのが妥当であろう。


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